そういえば、しあわせそうに結婚して、かなしそうに別れていった人たちを、大人になるほどたくさん見るようになる。ここにも、大人と若者の違いは出るなと思う。20歳くらいの時は、結婚したところとか別れたところとかのどちらか一方しか見てないことが多いけど、もっと年上になると、同じ人の結婚と別れを見ることが多くある。そういうのを見るにつけ、結婚する時はあんなに幸せそうだったのになーと思う。すると、たとえ今、しあわせそうな人でも先はわからないと思ってくる。だからよく大人の人が若い人に、今がいちばんいい時だからとか言うんだな……それは経験からくる言葉なんだろうけど、だとしても若い人からしたら、いい時ならいい時を100%楽しめばいいのだから、先の不幸を言わないでほしいと思う。現実というものは、だれでも実際に体験して、それぞれに身につけていくことだから、たとえそれがおおむね真実に近いことだとしても、夢をこわすようなこと、大人の人は子どもに言わないことが礼儀のような気がする。
(銀色夏生『つれづれノート2』角川文庫 pp.20-21)